第三話『口実とやり取り』

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 彼の曇りのない太陽のような笑顔に元音(もとね)は心が満たされる。実行に移して本当に良かったと心底思っていると、再び久土和(くどわ)の友人――雨宮(あめみや)が口を開いてきた。 「平ちゃん? 何だその呼び方。クド、お前いつの間にこいつと仲良くなってんのか?」 「最近話すようになったからなーははっ!」 (久土和くん、なんて完璧な回答……)  久土和のやましさなどどこにも感じられないその元気な回答は、元音の心を更に弾ませていた。  彼の姿にうっとりとした目で視線を向けていると「やべっ! そういや今日は購買早売りの日だぜ!! 早く行かんと!!!」ともう一人の男子生徒――岩根(いわね)が声を上げてくる。  どうやら久土和はいつも購買で昼ご飯を買っているようで、その一言で彼の様子も慌てた表情へ一変する。 「うおっ忘れてた! 行こうぜ! 平ちゃんまたな!!!」 「えっうん!! 行ってらっしゃい…」 (またな!? 優しい……)  慌ただしく教室を出ていく久土和の背中をそのまま見送りながら元音は久土和との嬉しい会話を何度も頭の中で思い返していた。 第三話『口実とやり取り』終                 next→第四話
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