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第五話『予定と約束』
六月。久土和を好きになってから早数週間が経過していた。
彼との関係は良くも悪くも変わる事なく、元音の片思いは続いている。
久土和との接触は常に図っており、彼へのレインも毎日のように送っていた。あまりにもしつこいのもどうかと思うのだが、本人に全く嫌がっている様子が見られないので継続している。
久土和が疲れ切った表情を見せたならば、少しは遠慮しようと思っているのだが、彼は毎日のように曇りのない元気な笑顔で元音に言葉を返してくれるのだ。それが自分にとってとてつもなく嬉しく幸せな事だった。
「おはよーっ」
「元音、おはよう」
いつものように友人と挨拶を交わし、元音はチラリと久土和の席を見つめる。彼はまだ登校していないが、彼の幻影のようなものまで感じてしまうのだから元音の熱中具合は相当のものだ。
自覚しながらもそれを楽しんでいる自分は、好きな人と同じ空間にいられる喜びを噛み締めながら日々を送っている。
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