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「おっ平ちゃん水泳おつ! どうしたんだ?」
水泳の後急いで髪を乾かし、久土和の元へ訪れると、彼はいつものように晴れやかな笑顔で元音を出迎えてくれる。その様子に彼への好きさを実感しながら「久土和くんもお疲れ様っ! あのね」と言葉を続けた。
「久土和くんの好みの女の子教えて欲しいっ」
元音は彼に向き合いながら単刀直入に問い掛ける。
先ほど久土和の逞しくも格好良い水着姿に大変レアな前髪下ろし姿を見たばかりの元音は、いつになく緊張しながらしかし久土和に質問をぶつけていた。
クラス内は休み時間というのもあって既にざわついており、元音の言葉を聞いている人物は久土和の周りにいる僅かな男子生徒だけだ。目立つのは好きではないが、元音の久土和への好意はもう既にバレているのを知っている。
聞こえない場所へ移動して尋ねるより、人数も少ないのだからもう開き直った方がいいだろうと元音はそう結論付けていた。
するとそんな元音の直球的な質問に久土和は顎に手を当てながら真剣に悩む様子を見せる。
「好みの女の子かあ……そうだなあ」
久土和は元音の率直な問い掛けにいつも通り優しい態度で答えようとしてくれる。元音は彼の態度とどのような回答をもらえるのかという緊張感で待っていると久土和は笑いながらこう答えた。
「ロング女子は好きだな、後は……あんまり拘りねえかな。参考になるか?」
(ロング……っ!!!)
元音は心の中で強くガッツポーズをしながら「ありがとっ! めっちゃなったよっ!」とお礼と感想を告げる。
久土和は何故そんなことを聞いてきたのか尋ねてくる事もなく、明るい笑顔で「おう!」と言うと参考になって良かったと嬉しいことを口に出してくれた。もうどんな男よりも彼が真の王子様だ。久土和の言動でそう再度確信した元音は上機嫌で自席に戻るのであった。
第十一話『肉体美と前髪』終
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