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「お願いっ! 久土和くんの写真撮ってきてくれない? 待ち受けにしたいのっ」
放課後、雨宮と岩根を呼び出し、元音は早速お願いをしていた。すると頭を下げてお願いする元音に二人はこんな言葉を発してくる。
「鉄平マジでキモいな」
「誰がストーカーなんかにダチの写真渡すかよ!」
酷い言いようだ。元音が久土和を好きだという事をこの二人が知っている事を元音は知っている。電撃告白をした時この二人もあの空間にいたからだ。
「別にキモくていいし、ストーカーでもいいけど、写真欲しいんだよね」
元音は彼らを見やりながらそう言葉を続ける。
「わたしも久土和くんが嫌がるなら頼まないよ。でも久土和くん、絶対いいよって言ってくれる人でしょ? 今回の件も本人が見てたら絶対笑って受け入れてくれると思っての頼みなんだ」
元音も勝手な思い込みでこう説得をしているのではない。久土和なら本当に全く気にせず写真を撮らせてくれるのだと確信があるからだ。彼が嫌がるのなら、そもそもこのような事はたとえ喉から手が出るほど欲しくてもしない。
そしてなぜ本人に直接頼まないのかの説明も彼らに話すと、二人は拒絶していた空気から次第に元音の意見に流されていくような空気に変化していた。あとひと押しだと元音はもう一度言葉を続ける。
「だから久土和くんの写真撮ってきて欲しいの! 盗撮してって言ってるんじゃなくて普段の久土和くんを一枚でいいから収めてくれればいいんだ! わたしに頼まれたって言ってくれてもいいし」
どうしても久土和の普段の写真が欲しかった元音はそう言って彼らに懇願する。
しかし彼らは後ろめたいのか了承の声は出ず、岩根は「でもさあ…お前、クドの彼女でも何でもねえじゃん」と口に出してくる。こうなってくるなら、別の手段だ。
「お金払うって言っても断る?」
「「!?!?!?」」
そう言って元音は事前に忍ばせていた千円札を二枚ポケットから取り出し、二人に見せつける。
お札を目にした二人は瞬時に目を丸くし、そうして先ほどとは打って変わった反応を見せてきた。
「任せとけっ!! 何なら何枚でも撮ってきてやるよ!!!」
「おれ写真には自信あんだよな。期待して待っとけ!!!」
そう言って雨宮と岩根は元音のお願いに頼もしい啖呵を切ってくれるのであった。
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