第十三話『部外者からの忠告』

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 授業中、先程の金堂(こんどう)の言葉を思い出していた。彼の言葉で行動を変えようとは全く思っていないが、嫌な記憶として思い出してしまったのだ。  金堂が元音(もとね)を嫌ってのあの発言というよりは、彼が友人である久土和(くどわ)の立場を考えてあのような発言をしたという事は何となく分かる。  断らない性格の久土和が疲れないよう友人としてあのように影から見守っているのかもしれない。  しかしそれを分かってはいてもあやつの発言には不快なものが多数含まれていた。 (キモいってそんなの知ってるし……ストーカーはちょっと思ったけど、久土和くんが何とも思ってないし、痛いとか、そんなの……)  久土和がもし、話しかけ続ける元音にもう話しかけないでくれと言ってくるのなら、彼を諦めはしないが何か他の対策を練っている。久土和に別の方法でアピールできる方法を遠回りになってでも考え出すと自分の中で決意している。その気持ちは彼を好きになってから一度も消してはいない。 (久土和くんにはずっと笑っててほしいもん)  久土和が嫌がる事は絶対にしたくないのだ。好きな人の事は完璧に尊重したい。  無理を言って何かをさせてもらったり、無理をさせて何かをするのは望んでいない。元音の中では久土和と自分は王子と姫なのだ。絶対彼に不満を持たせたくないという思いは、元音の中でもとても重要な点だった。 「鉄平、この問題前で解いてみろ」 「…はいっ」  考え事をしていると突如、教師に指名され、そのまま黒板まで足を運ぶ。  すると久土和がこちらを見ている視線を感じ、チラリと彼を見るとそこで久土和が無言で親指を立てながら元音に笑いかけてくれていた。元音の心臓はそれだけで高まり、先程までの悩みは一気に消し飛ぶ。  何が迷惑だ。本当に迷惑と思っている相手にこのような笑顔を向けてくれるわけ、ないだろう。  元音はそう考えを改めると、金堂の事はもう頭から追い出し、久土和への愛に頭の中を完全リセットする。久土和がこちらに笑いかけてくれるだけで、元音は自信を持てるのだ。 第十三話『部外者からの忠告』終                next→第十四話
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