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第十四話『王子からの全肯定』
「おい鉄平」
授業後の休み時間は何の躊躇いもなくいつものように久土和に話しかけ、満足気に廊下に出たところで不快な声が耳に響く。金堂だ。
元音は無言で彼の方を見ると、金堂は先程よりも不機嫌そうな顔つきでこちらを睨んでいる。忠告を聞かなかったからこのようにまた呼び止めてきたのだろうが、元音はもう彼とのやり取りなど思い出すのも嫌だった。
「お前、本当にきめえぞ」
「久土和くんはキモいって言わないから別にいい」
そう言い返すと、金堂は舌打ちしてこちらに再度鋭い視線を向けてくる。何も良い事のないこのやり取りをどうにかしたいのだが、金堂はまだ解放してくれる気配を一切見せてこない。すると、金堂は再び口を開いてきた。
「クドに話しかけんな。痛いやつだってなんで分かんねえんだよ」
「痛くてもいいよ。久土和くんさえ何も思わないならわたしは周りになんて思われてもいいの。金堂に気持ち悪いとか言われても全然構わないし」
そう言うと金堂は物凄い形相でこちらを睨んでくる。金堂は久土和ほどのガタイの良さはないが、野球部に所属しておりそれなりにイカつい。その為万が一殴られでもしたら元音も相当痛い思いをするだろう。
流石に校内で暴力はないだろうが、そんな事が頭をよぎっていた。しかし元音は再度の言葉を発した。
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