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「あーくそ、分かったよ。悪かったな、鉄平。もう口出ししねえ」
久土和の謝れという圧が効いたのか、数分の間を得てから金堂はそう言葉を放つ。悔しそうな表情ではあるが、久土和の言葉に反論する気はもうなさそうだ。
「うん」
元音は彼の謝罪にそれだけ返すと久土和も表情を変え「おう、金堂。俺のためを思ってくれたのはありがとな!」と笑いながら金堂の背中をバシバシと叩き始めた。
その光景を見て元音は更に久土和に心を奪われてしまった。何て、何て優しい男の子なのだろう――。
(ついさっきまでいがみ合ってた金堂に優しい言葉かけちゃうんだ……素敵……)
久土和は悪い事を悪いと相手に伝えて相手も納得すれば、それ以上相手を責めることはしない、そんな人なのだ。金堂を煙たがってもう友人として接しないという選択肢はきっと久土和にはないのだろう。
「くそっ何だよクド、ったく……お前の考えは一生理解できねえよ」
「おう! 人それぞれだからな! ダチにもわからねえ事はあるだろって!」
「……ったくよ―」
金堂はうざったそうに背中を叩いてくる久土和にそう言い放つが、満更でもなさそうだ。やはり久土和のコミュニケーション能力は凄い。先程まで対峙していた金堂を見事懐柔してしまったのだ。
元音の一件で久土和が金堂と不仲になる心配はないのだと、今のこの光景を見たら誰もがそう確信できるだろう。
「平ちゃん、怖い思いさせたな。俺のせいですまねえ」
すると久土和は元音の方に視線を向け、そんな謝罪を繰り出してくる。表情は先程の真剣な顔つきに戻っていた。
いつも思うのだが、久土和は自分のせいではないのに自分のせいだと言って謝罪をしてくる。きっと関わっている時点で自分も悪いと思っているのだろう。本当に優しすぎではなかろうかと心配になるくらいだ。
「久土和くんが謝る必要全然ないよっ! 助けてくれてありがとう! 全部肯定してくれて嬉しかった」
元音の行動に対して、全てを肯定してくれた発言が本当に嬉しかった。彼の負担になっていない事が久土和本人の口から直接聞けた事がとても喜ばしかった。
元音は彼にそう伝えると、久土和はいつもの笑顔を見せてそりゃ良かった! と声を返してくれるのであった。
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