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第十五話『柔道の姿が見たい』
あれから久土和と元音の関係は特に大きな変化もなく続いている。
久土和はいつも元音の王子様であり、元音は彼に恋をし続けるそんな関係だ。
そして元音の噂が出回り始めてから二日が過ぎていた。
「おはよーっ」
いつものように登校した元音はいつも挨拶を交わすクラスメイトに言葉を向け、その相手達からも明るく挨拶を返される。
すると席に着こうとしたところで空名がこちらに近付いて来ていた。
「もっちゃん! ねえ新作のゲームがやばいのっ!」
空名はやけに興奮した様子で挨拶も吹っ飛ばし早口にそう告げてくる。空名らしいその姿に特に驚く事はなく、元音は至って普通に彼女へ声を発していた。
「おはよ空名。どんなゲーム?」
「もやし男を筋肉男に育てるゲームだよ! 筋肉の種類もたくさんあって、育て甲斐があるの!!! もっちゃん興味ない!? 貸すけど!!」
空名が新作のゲームを始める度にこうして紹介をしてくるのは恒例行事でもあった。
元音は決してゲーマーでもなんでもないのだが、なぜか彼女はいつもゲームをさせようとこうして勧めてくるのだ。
まともに寝ていなさそうなクマを目元に残した空名は楽しそうに元音を見つめると、手元にゲームのソフトを取り出していた。
「わたしはいいかな、ごめんね」
「えーっ!! 筋肉だよっ!? 久土和みたいな男も育てられるよ!?」
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