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元音が断ると空名はそう言ってどうどう!? としつこく勧誘してくる。しかしその勧誘の仕方は元音には全く響かなかったのである。
「久土和くん本人にしか興味ないからさあ。えへへ」
そう言って顔を赤らめながら再度断りの言葉を述べると、空名は「むむ……もっちゃん結構こだわり強いよねえ。オーケー、把握」と言ってようやく引き下がってくれる。
(久土和くんみたいな人じゃ全然意味ないし……)
彼に似た誰か、というのは元音の胸を全くときめかせない。ただ久土和に似ただけの赤の他人であるからだ。
元音が求めている王子様は久土和ただ本人のみであり、似ている者がいようがいまいが正直どうでも良いレベルである。
例えばこの世界がファンタジーな世界であったとして、久土和の魂が今の彼の姿ではない別の誰かに移動したとしたら、元音はその新たな体に移動――いわゆる転生したその久土和に再び恋をすると確信をしている。たとえその姿がどのようなものであろうとだ。
久土和の姿を好いているわけではない。彼が筋肉を持っているから好いているわけではない。彼が優しいから好いているわけではない。
そう、久土和勝旺という男そのものに元音は惹かれているのである。久土和が久土和であるのなら、彼の姿も筋肉も優しさも全てを愛せるのである。
だから、彼が彼でなければ元音には興味をそそられる要因にはならないのだ。
久土和がネズミに転生してもきっとそのネズミ久土和を元音は心から愛せるだろう。異常に感じられるが、それが元音の愛なのだ。久土和への本気度はそれほどの重みであった。
(久土和くん、今日もギリギリ登校かな……ふふ、かわいいな)
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