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「クドじゃあな〜」
「久土和、部活頑張れよーおれもだりいけど頑張ってくるわ」
「おう! 頑張ろうぜ! また明日な」
終礼が終わり一斉に生徒が教室を出て行く際、クラスメイトに声を掛けられる久土和の姿を少し離れた距離で見守る。
久土和は陽気に友人らに挨拶を向け、ある程度の人数が教室を出ていくとこちらに視線を向けてきた。彼の視線がくすぐったく、顔の熱は上がっていく。幸せだ。
「平ちゃん待たせたな! じゃあ行くか!」
「うんっ本当にありがとうっ! 楽しみだな〜っ」
久土和はすぐに笑みを向けるとそう言ってリュックを片手で背負いながら元音の方へ足を進める。距離が近づくだけで元音の心臓は五月蠅さを増していた。
(きゃ〜〜っこっちに歩み寄ってくれる王子様……っ!! 放課後の約束、ほんっとうに最高……)
元音はそう思いながら放課後に勉強会をした時の事を思い出す。あの時も同じような感覚で終始幸せだった。
久土和と二人きりでこれから部活に向かうというのは、本来ならあり得ない展開だ。しかしそれは、今日夢でも何でもなく実現するのである。
(恋人みたい……えへへ)
久土和と恋仲になったらこのように並んで歩ける事が増えるのだろうか。そんな妄想を繰り広げながら元音は久土和と一緒に教室を出た。
彼は楽しそうに話題を口にし、元音もそれに反応する。この何気ない会話が本当に心地よい。久土和との会話でつまらないと感じた事は一度もなかった。
気が付けばあっという間に部活の会場へ到着し、久土和は律儀に顧問である教師に元音の事を説明してくれると、そのまま体育館に赴き始めるのであった。
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