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元音の通う学校には体育館が二つある。
一階に設置されている体育館では放課後多くの部活動が行われているがもう一つの体育館は地下に設置されており、広さは一階にある体育館より狭い所だ。
柔道部はいつも後者の体育館で行われているようで、元音は地下の体育館に足を運んでいた。
顧問に元音の説明をしてくれていた久土和は、道着に着替える為部室へ向かう必要があったので現在は元音と別行動をとっている。
「見学の子?」
まだ部活動は始まっていなかったが、数人の部員が集まり始めていたため邪魔にならないよう、あらかじめ用意された椅子に腰掛け見学をしていた時だ。
唐突に声を掛けられ顔を上げると、体操着を着用した元音よりも身長の高いショートヘアの女子生徒がこちらを見ており、彼女は再び口を開いた。
「あたしはマネの斉藤襟子。あなたもマネ希望?」
マネージャーだという彼女はそう言って自己紹介をすると元音にそんな事を尋ねてくる。
元音は椅子から立ち上がり、小さくお辞儀をしてからマネージャーの希望ではない事を先に告げていた。そうしてすぐに自分も自己紹介を行う。
「わたしは二年の鉄平元音です。実はずっと見たくて、久土和くんに頼んで見学にきました」
「そうだったんだ〜! 久土和君のお友達か、是非ゆっくり見ていってね!」
そう快く口にしてくれた斉藤は先輩である三年生だった。彼女は入学してからずっと柔道部のマネージャーをしており、今マネージャーをしているのは彼女ともう一人だけなのだそうだ。
「先輩、少し聞いてもいいですか?」
久土和の姿はまだ見えない。斉藤と何気ない会話をしていた元音は、彼が体育館に現れるまで彼女に気になっていた久土和の事を尋ねてみていた。
「久土和くん、モテますか?」
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