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雪月の秘密
雪月のあの腰の傷…
なんか引っかかるんだよな。
今まで引きこもってた理由と、何か関係があるんだろうか。
俺が知ってる雪月の情報は、住んでる家と名前とタバコの銘柄と、最近始めたバイトの事くらい。
それと同じように、多分雪月も俺の事は何も知らない…はず。
あの引越しの日、雪月の引越し作業を手伝ったのは本当にたまたまで、その時に一目惚れしたってのはホント。
一人暮らしをするには少なすぎる生活用品や洋服、その割にものすごい量のゲームソフトとパソコンの数。
それに俺らに対する接し方や透けそうなくらいに白い肌は、恐らくあまり外に出ないやつなんだろうということは、その時既に何となくわかっていた。
最初こそ不気味だなぁくらいに思ったけど、あの真っ白い綺麗な手に触れた瞬間、長いまつ毛の奥の透き通った瞳に魅せられて心臓が跳ね上がったんだ。
あの時感じたあれはなんだったんだろう…
物凄く儚くて…
今にも消えてしまいそうで…
でもそれだけじゃなくて、なんか…
それが知りたくて気になって少しでも近付きたくて、出来れば気を引いて仲良くなりたいなんて。
なんか分かんないけど心の底から思ってしまったから、俺はここに引っ越してくることを決めたんだ。
それから俺は、ずっと雪月を見てた。
俺が見てることに雪月が気付くまで、ずっと…
「あ、もしもし…大和?」
(佑人…?どうした?)
大和は俺の幼馴染で仕事仲間でもあり、大和親父と俺の親父は二人でとある仕事をしてて、俺らもその仕事の片棒を担がされている。
引越しもその一環で、身辺調査なんかは大和の親父さんの得意とするところだ。
「やっぱちょっと調べて欲しいんだよね…」
(あぁ…例の彼氏?)
「うん…」
(本当にいいの?こっちで調べちゃって…)
「…やっぱりそう思う?」
(うん…本人が話してくれるまで待ってみたら?)
「そうだよなぁ…」
もし調べてなんか出てきちゃったら俺、多分態度に出ちゃうだろうし、コソコソ人のこと調べんのも良くねぇよな…とは思うんだけど。
(ふふっ…まぁこっちでもちょっと調べとくよ)
「うん…ありがとう」
(なんかわかったら連絡する)
「おぅ」
(あんま考えすぎんなよ?)
「わかってるよ…」
電話を切って深くため息を着けば、こんなにも雪月の事が気になって仕方ないなんて、思ってたよりハマってるんだと自覚させられる。
だとしたら…やっぱ人に頼るのは良くねぇよな。
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