潜入

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潜入

薄暗い雑居ビルの中を物音がする方向へ進んでいくと、奥の部屋から人の話し声が聞こえてくる… そおっと覗き込むと、ぼやっと光る明かりの先に人影が一つとその下に… 雪月…!? 相手が一人ならいける、けど奴が何を仕込んでるかも分からない中、無闇に飛び込んで行って雪月に何かあったら… ここは様子を見ながら、大和の到着を待つか。 けど…あぁ、クソっ…待ってらんねぇ… このまま黙って、冷たいコンクリの上で怯える雪月を見ていられなくて足を一方踏み入れると、張り詰めた空気の中で二人の息使いが聞こえる… 身を潜め徐々に近ずいて行くと、二人の会話が聞こえてきた。 (…お前が邪魔しなけりゃ…5年だぞ…腰…) 5年…邪魔しなければ…?何の話だ…? 腰って…!?こいつ雪月のこと知ってて…? そして俺が目を逸らした一瞬の隙に男は刃物を振り上げていて、考えてる余裕なんてなくて俺は後先考えず突っ込んで行った。 「雪月っっ!!」 思いっきりそいつの横っ腹に飛び蹴りを食らわせ、倒れて怯んだ隙にそいつの手からこぼれ落ちた刃物を拾い、そいつに跨り胸ぐらを掴みながら刃物を鼻先ギリギリに振りかざした。 「…っ、」 「…!?お、お前っ…あの時のっ」 「またお前か…」 覚えてる…そうだ、コイツは5年前のストーカー事件の男!? 傷害で捕まったはずだがもう出てきたのか…? でもなんであの子じゃなくて雪月を… 腰…あの傷… もしかして…雪月があの時の…!? 俺はあの時、被害者の男の子のことばかり気にして、もう一人の男の子を守ってやることが出来なかった事をものすごく後悔していた。 あの後、彼はすぐ救急車で運ばれてうちらは警察で事情聴取。 その時に刑事さんに聞いた話だと、面会謝絶で会うことはできないと言われたっけ… 忘れたわけじゃなかった… だけど当時、次々と舞い込んでくる依頼を片付けていくので精一杯で、彼の事は徐々に記憶からこぼれ落ちていったんだ。 でもあの一件以来勢い任せで仕事することを止めた。 もう二度と… 誰も傷つけたくなかったから―――
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