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家業とは
雪月もバイトに慣れてきて、前よりは忙しくなくなった頃。
前の日から俺の家に泊まりに来てた雪月と、イチャコラし終わったあとの事だった。
「はぁっ、はぁっ…」
「はぁっ、ん…っ、佑人ぉ…?」
「ん…?」
「これ、本当に大丈夫…っ?」
「…っ、あぁ…平気…っ」
実は前の日に親父から頼まれた仕事でヘマして、顔に傷を作って帰ってきてしまったのだ。
痛々しく腫れ上がるほっぺをどうにも隠すことが出来なくて、雪月は俺の顔を見るや急いで家に戻って、消毒液やら何やらを持ってきて戻ってくると、泣きそうな顔して手当をしてくれた。
でもその手は少し震えてて、何があったのかもあえて聞いてくることは無くて、ただ心配そうに俺の手をぎゅっと握ってくれた。
そんな雪月にムラムラして直ぐに行為に及んでから今に至る訳だが、俺が手を伸ばせば優しく抱きしめてくれてるから、俺も雪月の腰の傷には触らないように手を回して顔を埋めれば、やっぱりなんか思い出せそうで思い出せない…
「ねぇ、佑人?」
「ん?」
「仕事って…何してるの?」
「あぁ、仕事?うーん…色々?」
「色々…とは?」
「何でも屋…って言うか…仕事になる事ならなんでも…?」
「引越しもそれで…?」
「あー、うん…そんなとこ?」
別に内緒にする事でも無いけど、本当になんて言っていいかわかんないんだよね。
探偵みたいなことしたり人助けもするし、時にはストーカーを撃退したり?喧嘩の仲裁に入って今日みたいにぶん殴られたりしたり…
と、今日のことをふと思い返しながら何となく頬に手を置くと、雪月の手が俺の手の上に重なった。
「今日のこれも…仕事…?」
「ん?あぁ、そんなとこ?」
「危ないことも…するのかよ…っ」
「うーん、時には?」
「…やだな」
俯いて悲しそうな顔をする雪月の頭を、ポンポンとなでて何とか宥めるけど、受け入れて貰えなかったらどうしようと本気で動揺する。
「困ったな…辞めるのはちょっと…」
「なんで…?」
「家業…?なんだよね」
「えっ…もしかして佑人ってヤ…」
「あ、うーん…そうじゃないけど、違うとも言い難い…かな」
「そう…なんだ…」
これ言うと女なんかはすぐ離れてくけど…
まぁ仕方ないないよね。
でも雪月が離れていくなんて事になったら、仕方ないなんかじゃ済まないから、必死にその場を取り繕った。
「…嫌になった?」
「ううん、ならねぇよ…」
「ほんと…?」
「うん…ほんと」
「そっか、良かったぁ」
心底安心してほっと息を吐くと、雪月は俺の顔を覗き込んで心配そうな顔で呟いた。
「無理はすんなよ…」
「ふはっ、大丈夫!俺こう見えて結構強いの!」
「そうなの?」
「まぁね!お前一人くらいなら余裕で守れっから!」
「…っ、かっこいいな…っ///」
「う…っ////そうかよ…っ////」
かっこいいなんて言われてガチ照れした俺は、思わず枕にうつ伏せになりニヤケただらしない顔を隠した。
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