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ストーカー?
それから何日か経った夜のことだった。
親父が表向きに経営するモデル事務所で適当に仕事して、ジムに寄って帰る途中、タバコをふかし携帯をいじりながら歩いてると、横から急に人がぶつかってきた。
「いってぇなぁ!…んだよ…っ!てめぇ…!」
相手は勢いよく尻もちをつきら被ってたフードがふわっと取れて、真っ白い肌が露出してこっちを見上げた。
「え?雪月!?…わりぃ…大丈夫か…っ?」
「…っ、佑人…っ!?はぁっ…助けてっ…!」
「えっ、なんだよ…どうし…」
「変なっ…やつが…っ」
息を切らして俺にしがみついて震える雪月を、とにかく人目のつかないところまで連れて逃げた。
そしてやっと少し離れた路地裏入ると、息を切らし動揺してる様子の雪月を一旦落ち着かせて話を聞いた。
「なんだよっ…何があった?」
「はぁ、はぁ…なんか、つけられてて…っ」
「つけられてる…?どっから?」
「…んっ、たぶん、バイト先…っ」
「今日が初めてか?」
「…ううん。2、3日…前から…」
「おまっ、なんで早く言わねぇんだよっ!」
「ごめ…っ、最初は、勘違いだと思ったのっ…けど…っ」
「…雪月っ!?」
膝から崩れ落ちるように倒れた雪月を慌てて支えて、とにかく家まで連れて帰った。
「ほら、水飲め…」
「うん…」
「で、心当たりは?」
「ねぇよ、そんなの。大体バイト始めたのも最近だし、それまで外にだって殆ど出てねぇし…」
「うーん。だよな…」
雪月に恨みを持つ人間か、もしくは興味を持つ人間か…
どちらにしたって、雪月に身の危険が及びそうなことは極力避けたい。
こんな事になってるなら雪月の事だけじゃなくて、徹底的に身辺調査もしておくんだったと今更後悔した。
「けど…あ、そう言えば」
「ん?なに?」
「1週間くらい前、お客さんに変な事言われて…」
「どんな事?」
「綺麗だね…って…」
「…っ、なんだよ…そいつ」
「知らない…っ、…けど、気持ち悪くて…」
ならば後者か…
そいつが犯人だとは限らないが、念の為警戒した方が良さそうだ。
「そいつ、男?女?」
「男…」
「背は?顔は覚えてる?」
「キャップ被ってたから、顔までは見てない。でも俺より…背ぇ高かった」
男か…!?
そいつがストーカーか何かだとしたら…
こんなヒョロい雪月じゃ、簡単にどっかに連れ込まれかねない。
「お前、バイト何時まで?」
「えっと…大体8時とか?それくらい?」
「明日から毎日迎えに行くから、絶対一人になるなよ」
「えっ、でも佑人だって仕事…っ」
「は?仕事なんてどーでもいいから!それよりっ…お前になんかあったら…俺…っ」
あれっ…しんどい…凄いしんどい…
俺、雪月がいなくなったらどうなっちゃう…?
「佑人…っ!?」
「ふぇ…っ?」
「何で泣くの…っ」
「…っ、泣いてねぇしっ!!」
なんかわかんないけど、自然に溢れてきた涙を袖で拭うと、ふわっと暖かい雪月の温もりに包み込まれた。
「佑人、俺…っ、大丈夫かなっ…」
「大丈夫、俺が絶対守るから!」
このまま辞めさせたっていいんだけど、バイトを辞めさせたところで身の安全が確保される訳でもない。
こいつには手を出せないってとこを、見せつけてやんねぇと…
見つけたらボッコボコにしてやる。
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