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「ごめんね。叔母さん、父さん達仕事が忙しくお盆も休みがとれなかったんだ」 「いいのよ。最初から兄さんには期待してないから。それより葵ちゃんはいいの? 受験生じゃないの?」 「はい。でも推薦枠でなんとか行けそうなんです」 「あら。よかったじゃないの! じゃあ、いづると同じ大学に行くの?」 「はい! 春からよろしくお願いします」 「もちろんよ! きっといづるも喜ぶわ!」 「叔母さん、二階のいづる君の部屋借りてもいい?」 「ええ。いづるは葵ちゃんにあえるのを楽しみにしてたから使っていいわよ」 「ありがとう。では、お邪魔します」  僕が二階にあがるといづるがベットで寝ころんでいた。  僕を見ると片手をあげて「よお」と言った。思わず顔がほころぶ。 「へへ。来ちゃった。叔母さん、僕がこの部屋使ってもいいって」 「ああ。お前になら好きにされてもいい」 「なぁにぃ。その言い方やーらしぃ」 「ばっ! ばか。そんな意味じゃねえぞ」 「わかってるよ! 部屋を好きにしていいって事でしょ? 相変わらず純情なんだから」 「うるせー。それより受験生なんだろ?」 「うん。そうなんだ。テストばっかで大変なんだよ~」 「まあな。この時期は仕方ないよな。それで進路はどうするんだ?」 「前から言ってた通りにいづる君と同じ大学希望だよ」  いづるは驚いたのかベットから起き上がった。 「え? お前本当に決めたのか? なんでこんな田舎にしたんだよ。もっと都会のいい大学があるだろう。俺は自宅から通える場所を選んだだけなのに」 「またまたぁ。僕知ってるんだよ。本当は叔父さんの農業を手伝おうと品種改良や肥料の研究してたの」 「ちっ。バレてたのか」 「ふふ。僕はなんでもお見通しさ。だから受かったら、ここでお世話になるつもり」 「はぁ? よりにもよって、お前ここに転がり込むつもりか?」 「うん。だって、少しでもいづると一緒に居たいんだ」 「……俺はもう前と違って、あまりここには帰ってこれないんだぞ」 「いいんだよ。一年に一度でも僕はいづるに会いたいんだ」 「……そうか」 「うん。そうだよ」  いづるの形の良い眉が下がり気味になる。何か言いたげな表情に僕は先に言葉を繋げた。 「それにさ、いづる君と一緒にした田植えや、土壌検査が楽しくってさ。植物が活き活きしてるのを見るのが好きなんだ。僕は小さい頃から身体が弱いから……だから僕の手で植物が元気になるのが楽しいんだ」 「……そうか」 「うん。そうだよ。そうなんだよ」  僕はいづるの傍に座ると彼の肩にもたれかかった。 「どうした? 葵はまだまだ甘えん坊だな」 「……違うよ。僕はもう大人だよ」  拗ねたように口を尖らすといづるがくすりと笑った。僕が顔をあげるといづるの澄んだ瞳が間近に見える。込み上げる想いが隠しきれない。 「……会いたかった」  いづるは黙って僕を抱きしめてくれた。少し間をおいて消え入るような声が聞こえる。 「……俺も会いたかった」 「うん。ふふ、そういってもらえて嬉しいっ!」  僕は満面の笑みでいづるを見上げる。いづるも笑顔で僕をみていた。
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