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脇役
世の中の全ての人は物語の登場人物で、どこかの別の次元の誰かが書いてる話で
私達の思考も何もかも作者様の手に全てかかっている、それが世に言う神様というものなのだろう、天照だとかゼウスだとか好きに言っているが本当の神の名前などわからない、どこかの世界のどこかの誰か、それが神なのだ
だから親友の伊菜穂が主人公の物語の中で私が脇役なのだ
そう考えれば何もかも楽だった。
私は神様の思うようになすがままに動けばいい
難しいことなど考えず、伊菜穂が歩むハッピーエンドの邪魔にならないように
手助けしたりするのが私の役目だから
伊菜穂が私の好きな勇一君といい感じになっても邪魔しちゃいけない
ただ二人の恋を盛り上げるプラスの要素に徹するべきで、少しも勇一君を好きなことを出さず二人を応援すべきだ
私は、心理描写も何もない物語に賑やかしのように出るだけの、人生など描かれない、ただの脇役なのだから
「美穂!」
何も知らない伊菜穂が嬉しそうに私に駆け寄ってくる
「勇一くん達が放課後部活休みだからカラオケ行こうって!美穂も行けるよね!」
幸せそうな美人の私の親友、もちろんそれを断ると言う選択肢は私には無い
「もちろん!良かったね!誘ってもらえて!」
「だよね!凄い楽しみー!フフ」
私の可愛い親友、優しい美人な親友、彼女が笑うなら私の胸の内の寂しい気持ちも我慢できる
ほら移動教室だよと言う伊菜穂に元気に頷いて付いていく私の心は笑顔なんかじゃないけど私は笑ってなきゃいけない、だって私は盛り上げるだけの脇役だから
放課後、勇一君と勇一君の親友の瑛太君そして私と伊菜穂でカラオケに行く、もちろん伊菜穂と勇一君が並んで歩く、まるで当たり前のように瑛太君は私の隣になる、瑛太君の部活の自慢話を聞きながら、楽しく話て居ても、気になるのは伊菜穂と勇一君、そんなに見ているつもりは無かったのだけれど、
瑛太君に耳貸してと言われてちょっと近寄ってみる
「あいつらいい感じだよな」
ハッとして瑛太君を見れば瑛太君は二カッと笑って声を抑えて言う
「良いよなぁ勇一はモテモテで、伊菜穂といい感じなくせによ」
「別にそんなんじゃ」
瑛太君の言葉に声を抑えながら反論すれば笑われる
「親友のために諦める系?」
あぁそう言えば綺麗な形になるが、結局は私は逃げていただけなのに親友のために諦めると言えばとても綺麗な物語のようだ、ならばそれに乗ったほうがカッコがつくというものか
「伊菜穂が幸せなら私は良いよ」
諦めるように笑えばいい絵になったんじゃなかろうか、あぁ私は何てずるいのか、私は自分の事をキレイに見せるために瑛太君の筋書きに乗ったのだ
「ふーん、カッコイイじゃん」
「そんなんじゃ無いよ」
そんな言葉さえカッコつけていてカッコ悪い、なんて私はズルい女なのか、自分がただ負けるのが怖くて逃げて頑張ろうともしなかっただけなのに【親友のために諦める】と言う綺麗な肩書をを載せて瑛太君によく見られようとしている、本当の私はズルくて弱いだけの女なのに
カラオケに着いて、部屋に行けば少し嬉しいことが起こる、伊菜穂と私で勇一君を挟む形の座り位置になった。
瑛太君を見ても自然と端に座ってくれていて、まぁつまり私は勇一君と瑛太君に挟まれる形なわけで、ドキドキしながら私はその席に座ることを甘んじて受けた。あぁズルい私、諦めると言いながら、こんな少しの幸せを必死につかもうとしている、馬鹿だなぁ私、隣に座れたからって、ほら勇一君は楽しそうに伊菜穂と話しているのだから、
歌い始めて「次は美穂だろ、何入れる?」何て普通の会話も嬉しくて胸が跳ねる、瑛太君は、私が勇一君と話している時は会話に入らないようにしてくれる、その優しさが嬉しくて、瑛太君が物凄く凄くいい人に見える、
楽しい、楽しい時間、でもそんな楽しい中でも勇一君の気持ちはどう見ても伊菜穂に向いていて、
あぁやっぱり私はどこまで行っても脇役なんだと強く認識した時間でもあった。
帰りの時間、神様のイタズラか、それなら神様は何て意地悪なのか、私が勇一君と帰って伊菜穂が瑛太君と帰ることになった。
意地悪な神様に、今可能性が無いことを確認させた癖にチャンスを与えるなんてと文句を言いたい気持ちも、二人っきりで帰るチャンスを下さってありがとうとと思う気持ちもありながら複雑な気持ちで帰路につく
「カラオケ楽しかったなぁ」
「楽しかねぇ!勇一凄く上手くてドキドキしちゃった!」
「惚れちゃった?」
「えー?」
何て意地悪な質問なのか、その言葉に前から好きだったなて答えたい気持ちを抑えて言いたくないことを言う
「伊菜穂が気になるくせにそんなこと言うんだ」
私がそう言えば勇一君は顔を赤らめる、ほら、やっぱり私に可能性なんてない
「べ、別に伊菜穂は良いやつだなぁと思ってるだけで、確かに可愛いけどそんなんじゃ、えーと」
しどろもどろになりながら、どうこの場を逃げ出そうかとしている勇一君、それが可愛くて、それが苦しくて、可能性と言うタワーはボロボロと崩れ去る
「てか美穂と瑛太いい感じだよな!」
ズキンと胸に痛みが走る
「美穂は瑛太の事どう思ってんの?」
「良い人だよね、優しいし」
この後の言葉が容易に想像できてしまうが言って欲しくない、言わないで欲しいと願うがそれが叶うことはなかった。
「瑛太と付き合えばいいのに」
ほら、そうだと思った。
「何でそう思うの?」
「だってお前らお似合いじゃん」
ズキンとまた痛みが走る
「もー、瑛太君にはその気はないよ」
「そうかなぁ」
勇一君が少し不満そうに唇を尖らせている、会話がこんなもので無ければ可愛い表情に素直にときめけたのに。
「私ここだから」ともう別れる時間、
「そっかじゃぁな」とあっさり別れる勇一君、その背中を見送りながら、脇役が主人公に成れたならどんなに幸せだろうと思うのだった。
次の日も何時もと同じ学校生活を送って伊菜穂を立てるための学校生活、私は影で伊菜穂が光、恋物語と言う話を浮かび上がらせるためのただの飾り、
放課後、部活が終わるのを待って欲しいと伊菜穂が勇一君に言われた。
告白かなぁと胸を高鳴らせる伊菜穂
きっとそうだよ!何て喜んでいるように見せる私は何て陳腐で馬鹿馬鹿しい存在か、
伊菜穂と一緒に勇一君達の部活が終わるのを待つ、伊菜穂には幸せな時間で、私には不幸な時間、でもこの場から逃げる事が出来ない親友の伊菜穂に、怖いから一緒に居てーなんて言われたら親友として断る事が出来ない私はそんな脇役
放課後、勇一君と瑛太君が部活終のまだ熱が冷めていない状態で私達を迎えに来る。
「い、伊菜穂、俺と俺と二人で帰って欲しい」
「う、うん、帰る」
勇一君に誘われて伊菜穂は付いていく、あぁなんてお似合いな二人だろうと二人を見送る事しか私には出来ない
勇一君と伊菜穂が先に校門に向う、それを私がどんな顔で見送っていたかなんてわからないけど、いや、わかってるきっと酷い顔だった。
「あれは付き合っちゃうな」
瑛太君が独り言のように言う言葉に少し辛くなる
「だろうね」
誰が見てもお似合いで、誰が見ても思い合ってる素敵なカップル
「あのさ、何なら俺らも付き合う?」
「へ?」
何を言われたのかわからない顔をして瑛太君を見たら瑛太君は、優しいし笑顔で言う
「美穂が勇一を好きな事は知ってる、でも俺は美穂が好きなんだ、今は2番目でもいい、だからさ、付き合ってみない?」
きっとそれは酷いことだ、気持ちは別にあるのにそれを知っている瑛太君の優しさを利用して寂しさを埋めるなんて、でも
でも
でも、
一人は寂しい
「いいの?」
「いつか惚れさせる、俺だっていい男だろ?」
「ふ、自分で言う?」
「いや、自信がありますから」
瑛太君はきっと私を笑わせようとして言ってくれているんだろう、優しい瑛太君、その優しさに甘えよう
「お願いします」
「よっしゃ!見てろ!美穂は卒業する頃には俺に心底惚れてるから!」
「そうさせてね」
「任せろ!」
翌日、やはり勇一君と伊菜穂は付き合っていて、祝うついでに私と瑛太君も付き合ったと言えば、二人は大いに祝福してくれて、ダブルデートの計画を立てたりして、それが幸せになるんだ、勇一君と一緒じゃなくても私はきっと幸せになれる
そう、思っていた
ある日伊菜穂が本を落として走っていった。洋書のように綺麗に装丁された本の開かれたページに、私の名前を見つけた。
その時走っていった伊菜穂を追いかけるべきだったのだろうけれど見えない引力に引っ張られるように、好奇心で読んでしまって愕然とした。
私の思考も何もかも、一字一句違えず、まるでそれが私が書いた日記のように間違いなく書かれているが、その字はどう見ても伊菜穂の字である
その話は伊菜穂を立てて、悲しい心内を隠しながら勇一君を諦めるように書かれてる
カラオケの時の瑛太君との話も、カラオケで勇一君と話せて嬉しかった心も、勇一君と帰れて恨みがましくて嬉しかった気持ちも、瑛太君の心を受け取ることさえ全て書かれている
それはまるで私が主人公物語
本の中では伊菜穂が本を落として、それを拾うところからの行動全ても書かれている、魅入られて見ていた最後の1小節
【「私の書いた物語どう?」】
小説の中のセリフを一つも違えることない声が耳元でして振り返ると
伊菜穂がニコニコ立っていた
「頑張ってね美穂」
私の手からその綺麗な表紙の本を抜きとってにっこり笑って
伊菜穂は、帰っていった。
あぁ私の人生は神様じゃなくて伊菜穂の手に全て握られている
あの空白のページには今、勝手に始めて自分で感じた恐怖でも書かれているのだろうか。そして、またその後を伊菜穂がペンを走らせればもう私は伊菜穂の思うまま、自由なのは今だけ、
伊菜穂は、私をどうするのだろう
私は、どうなるの
その結末も今の私のこれからも全ては伊菜穂の手の中にあるのだ、
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