長い夢を見ている

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*  引っ越し先に荷物が届くの明日だからと、パパと私は近くにあるホテルに泊まった。  窓から見えるのはただのビル街だし、天井近くの穴から吹き出ているエアコンの効きが中途半端で気持ち悪かった。  ルームサービスでパパが頼んでくれたゴハンはおいしかった。いつもの粉をお湯で溶かすだけのコーンスープよりも遥かにおいしいスープだった。 「こんなにおいしいスープ、私、初めてだ」  思わず感想を漏らすとパパは大げさだなぁと笑った。  パパは仕事であちこちでゴハンを食べてるのかもしれなけれど、私はこんなおいしいコーンスープなんて食べたことがなかった。 「世の中にはおいしいものっていっぱいあるんだねぇ」  スープ一杯で何を言ってるんだと私も思ったけど、それは素直な気持ちだった。パンもハンバーグもその上に載っている目玉焼きもおいしかった。 「私、ずっと家に引き籠ってきたけど、外のゴハンもいいね」  そう言うと、パパは少し間を空けて「そうだね」と言った。    ずーっと家に引き籠り、学校に私は行っていないかった。この引っ越しがなければホテルのゴハンを知らなかったように、外に出ればわかることってあるのかもしれないって思った。
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