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藤沢美紀の不安
私は夫と一緒にゲームに参加した。山荘は霧深い山奥にひっそりと佇んでいた。出入り口は分厚い鉄の扉だった。私達が扉の前まで来ると上部に設置された監視カメラに青いランプが点灯して扉が開いた。
山荘内部に入ると異世界のような感覚が身体にひたひたと伝わった。私達とは別に三人の人物がいた。
ホールのテーブルの上に自分の名前が書かれたプレートと大きなモニターが置かれていた。
そしてテーブルの後ろのホール中央に、肩の高さぐらいの立方体の箱が置かれてあった。五人が中身を見ようとしたけど内側から黒い布で覆われて見えなかった。私はポケットの中にそっと手を入れた。
モニターに手紙と同じく黒い背景に白い文字が表示された。文章を読み上げる音声が聞こえたけど脳に直接響くような恐ろしい声だった。
『今宵は騙し合いゲームに参加して頂きありがとうございます。ゲームの司会進行を務めますホールマスターのロキと申します。以後、宜しくお願い申し上げます。ゲームを始める前にまずはご自分の名前が書かれたプレートを胸にお取り付けください。ゲームの進行はそのプレートの名前で行いますので、くれぐれも間違った名前をつけないようにお願い致します』
私は自分の名前が書かれたプレートを取り付けた。プレートは他の参加者の名前を表示していた。痩せ細った霧里洋介、貴婦人のような天音玲子。そして白衣を着ている渋谷優子。
私は夫の様子を窺った。夫はゲームに参加できてとても嬉しそうだ。でも私はこれから夫が楽しめるかどうか不安になっていた。
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