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霧里洋介の選択
僕は長引く不況で派遣会社から解雇を言い渡された。何の取り柄もない僕が新しい仕事に就くのは難しい。
そんな時に或る女性から思わぬ話を持ちかけられた。騙し合いゲームに参加して指定された行動をするだけで日給十万円が支払われるというものだった。
いつもの僕ならそんな怪しい話には乗らない。しかしお金がなくて半年間も家賃を滞納している僕は十万円が喉から手が出るほど欲しかった。
躊躇している僕に彼女が古いアルバムを差し出した。彼女がアルバムを見ながら説明してくれて驚いた。彼女の顔に懐かしさを覚えた。
僕は彼女の言葉に従ってゲームに参加した。山荘に着いて名前が書かれたプレートを胸に取り付けた。
全員が着け終わるとロキが画面を切り替えて低音の響く声を出した。
『全員が揃われたことを確認致しました。これより騙し合いゲームを始めます。ルール説明を致します。この山荘の中ではロキが提示する休息と行動の二種類の命令に皆様に必ず従ってもらいます。従わなかった場合は即失格になります。休息は二階にあるご自身の部屋で時間を過ごすことです。二階の部屋にはこのモニターと同じ表示をするモニター、二階の全ての部屋と一階のホールの天井に取り付けられた監視カメラから映し出す二つのモニターが各部屋にあります。また部屋は一度入るとロキの解除指示なしでは決して出られない仕組みになっております。行動はモニターに表示される言葉にただ従うだけです。ルールは以上になります』
僕も他の参加者も食い入るようにモニターを見つめていた。僕は事前に彼女から内容を聞かされていたけど指示された通りにした。
そしてロキから最初の命令が下された。
『霧里様以外は休息してください。霧里様はホールにこのまま残ってください』
僕以外の参加者全員が僕に目をやり、不審に思いながら二階に上がって行った。僕はホールでじっと待つことにした。
『四人が部屋に入ったことを確認致しました。霧里様、二階のお部屋の中に入ってベッドの下にあるナイフをお取りください。そして天音様をナイフで刺し殺してください』
僕はその文言を睨んだ。すると画面が切り替わった。ロキの紹介文と言葉が書かれてあった。
『ロキは北欧神話の悪神。狡猾でよく嘘をつく。霧里様、会って間もない他人を殺すことに躊躇されているかと思います。しかしこちらは十六年前に起こった大量毒殺事件の犯人が霧里様である証拠を掴んでおります。霧里様が高校一年生の時に起こした事件です。同級生八人を自宅に集めて毒殺した後、逃亡するために全身整形をして全くの他人に化けていることが判明しました。霧里様が実行して最後まで命令を守り続ければ優勝賞金一億円を獲得でき、なおかつ十六年前の事件の証拠はこちらで処分致します。実行しなければ賞金を得ることはできず証拠を警察に渡します。さあ、どちらを選ばれますか?』
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