天音玲子の思慮

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天音玲子の思慮

 私は講義を終えて大学から自宅に帰ろうとしていた。その時に見知った女性に出会った。  彼女と会うのは十年ぶりだろうか。彼女は心理学部に在籍していて、私は必修課程の心理学の講師だった。  面白い人で私のことを外見と話し方から貴婦人扱いしていた。大学の喫茶店で当時のことを懐かしみながら彼女と話した。  そして彼女に騙し合いゲームというものに参加して欲しいとお願いをされた。最初はいくら昔の教え子でも怪しい話だと思って取り合わなかったけど、彼女の計画を最後まで聞いて快く承諾した。  私は日曜日の六時に静かな山荘まで行った。私の後に二人がきて全員が揃ったようだ。私は彼女が話した例の人にすぐに気づいた。  ロキから命令が下り私は部屋で休息することにした。部屋の中にはテーブルとベッドが置かれているだけだった。そして各部屋とホールの様子、一階のモニターの表示を映すモニターが壁に埋め込まれていた。ミステリーマニアの私には、緊迫した空気の中での人の心情の揺れ動きは何にも変え難い楽しみだった。心理学の講義でも活かせそうだ。  しばらくしてモニターに霧里という男性に私を殺す命令が下るのが映った。私はその文字を見ると息を呑んで慌てて扉を開けようとした。部屋は窓がなく出口は扉しかない。木のテーブルを持ち上げて扉に投げつけたけど傷一つつかなかった。  廊下や隣の部屋から逃げろという声が飛び交っていた。私と同じように扉を開けようとしているのか扉を乱暴に叩く音も聞こえる。私は大声で悲鳴を上げながら部屋の中で慌てた。  私が必死の思いで扉を叩いている時にモニターに新たな文字が表示された。 『霧里様がナイフを手に入れたことを確認しました。天音様の部屋のロックを解除します。天音様はすぐにこの山荘から出ることを考えると思いますが、山荘の扉はゲームが終わるまで絶対に開くことはありません。天音様の部屋のベッドの下に大鎌がありますのでお調べください。使うかどうかは天音様にお任せ致します』
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