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先野光介の娘(!)
「あの……探偵の先野光介さんですよね?」
興信所「新・土井エージェント」の入居っている雑居ビルの玄関から出ると、突然声をかけられた。
「ん? そうだけど……?」
先野と、いっしょにいた三条愛美は立ち止まる。
見ると、ブレザーを着た高校生ぐらいの少女である。
「きみは……誰だい?」
三十八歳の先野は、ベテランの探偵としてこの興信所で働いて長い。過去に数えきれないほどの人間と接してきたから、以前に会ったことがあっても、いちいち憶えているはずもなかった。
「やっぱりそうなのね、パパ!」
「パパァ?」
人通りのある道端だというのに、大きな声が出てしまった。
「やっぱり若いパパはカッコイイね!」
「ちょっと待て!」
背は低く、顔は厳つく、生まれてこのかた「カッコイイ」などとお世辞でも言われたことのない先野は、状況が理解できない。
傍らにいた二十七歳の同僚探偵を見ると、仰天の表情。
「なにを言ってるんだ、きみは……! おれは独身で、きみのような大きな子供はいない」
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