先野光介の娘(!)

2/9
前へ
/58ページ
次へ
「先野さん、わたし、先に行ってていいですか? ちょっと時間がかかりそうですし」  見開く眼の奥から、どことなく外道を見るような冷たさを放っていた。口調にもそれが表れていた。  三条は社内でも優秀な探偵として評価が高い。依頼された新規案件に、これから二人でとりかかろうと事務所を出たところだったが、彼女ならば一人でも卒なく案件を片付けてしまうかもしれない。 「わたしの話を聞いて!」  女子高生は、先野の手を握りしめてきた。  先野は、わかったわかった、とうなずき、 「三条さん、先に行ってくれ。おれはコレをなんとか処理しておく。それと断言するが、おれに身に覚えはないからな」 「はいはい、そうですか。ご愁傷様です」  絶対に信じていない口調で三条は言い残すと、颯爽と歩き出していった。去っていく背中から黒黒としたオーラが出てるようだった。  日菜美(ひなみ)、とその高校生は名乗った。  人目のある通りで話すのもはばかられ、近くのコーヒーショップに場所を移した。平日夕方で、そろそろ客が増えてくる時間帯だ。
/58ページ

最初のコメントを投稿しよう!

10人が本棚に入れています
本棚に追加