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「それで……日菜美が母親をさがしてほしい……と、話をしに行ったんですか? しかし……」
「料金はいただいておりません」
「いくらかかるか知りませんが、興信所は未成年の依頼でも簡単に引き受けるもんなんですか?」
どうやら三条を、依頼料の取り立てに来たのだと思っているようだった。昨日今日と、どこへ外出していたのか初めて知って驚いているのが本心だろう。誤解をとく必要があった。
「いえ、当社はそのようなことはいたしません。今回、正式なご依頼案件としては受けていません。今日ここに来たのは、それをきちんとお伝えしなければと思ったのと、実のお父さんから、お母さんの失踪の理由を聞いておきたかったからです」
「……そうですか……娘がとんだご迷惑をおかけしました」
父親は顔を伏せた。
「しかしこれは、私たち家族の問題でありまして……」
それはそうだろう。これ以上は立ち入るな、という気持ちが伝わってくる。
もしかしたら父親は母親の所在を把握しているのではないか――と邪推したそのとき、
「協力してもらっても、いいんじゃないですか?」
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