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べつの声がして、三条はぎょっとして振り向く。その青年は、玄関ドアの手前に立っているのに、ドアを開けて入ってきたような空気の流れは感じられなかった。
「きみは……」
父親が絶句していると、
「お久しぶりです、元瀬雄伸さん」
二十歳ぐらいだろうか……青年はニコニコと微笑んでいる。
どなたですか? と三条が尋ねる前に、青年は名乗った。
「どうもはじめまして。ぼくはU8といいます。元瀬璃乃さんが消えた件に対応するために来ました。遅くなって申し訳ないです」
わたしは……と言いかける三条に、
「探偵さん、この件は普通の捜索方法では見つかりません」
玄関ドアを開けずに入ってきたらしい、U8というその青年が何者なのか、そして、母親璃乃の失踪を解決できるような口ぶり……三条の心は身構えていた。
「しかし……あれは十八年も前……なのに、ぜんぜん歳をとってないように見えるのは……」
元瀬雄伸は、遠い過去を思い浮かべているようだった。
U8との間になにかあった――。けれども目の前の青年はそんな過去を持っているような年齢ではなさそうに見える。
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