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戸惑う雄伸と三条をしりめに、なにもかも承知しているといった様子でうなずくU8。
「ぼくのことはいいから、璃乃さんを――」
「でもいくら思い浮かべても璃乃は……」
「だからまたぼくが来たんです。今回は、雄伸さん一人ではパワー不足です」
「今回の原因も……」
「そこは調査しました。やはりあのときと同じ、ある一定の記憶違いが発生したようです……」
探偵さん、とU8は、なんの話をしているのかわからない三条に言った。
「『シュレディンガーの猫』って、聞いたことありますか?」
唐突な問いであった。
三条は、眉をひそめ、
「量子力学のパラドクスを指摘した思考実験ですよね、確か」
質問の意図がわからなかったが、素直に答えた。原子の世界では観察者が見ているかどうかで物質の振る舞いが決定されるという理論物理学は、これまでのニュートン力学とは異質な考え方で、感覚的に実感できない。そこを指摘したのが「シュレディンガーの猫」だ。箱のなかの猫は生死両方の状態でいる、という摩訶不思議な理屈だ。
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