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母の秘密
二十八年前――元瀬雄伸が十歳のときである。曽祖父の法事で、親戚が集まっていたが、雄伸にとっては生まれる前に死んだ曽祖父の思い出などなく、大人ばかりの退屈なだけの集まりだった。そこに唯一いた子供が六歳の璃乃だった。又従妹とで、会うのは初めてだった。自然、雄伸は璃乃の相手をさせられる。
兄弟のいなかった雄伸にとって、璃乃は妹みたいに感じられた。璃乃にしても兄ができたように思えた。
だからそのひと月後、璃乃が行方不明になったという知らせを聞いて、雄伸はいてもたってもいられなくなった。
「おれもさがす!」
と言って、父親とともに璃乃の家に駆けつけた。目撃証言はあるもののまだ見つかっていなかった。が、雄伸が大人たちといっしょにさがしに出ようとしたとき、璃乃はひょっこり帰ってきた。
どこへ行っていたのかと問われても、よくわからないと璃乃は答えた。けれども無事に戻ってきたということで、それ以上の詮索はされなかった。検査入院もしたがどこにも異常はなかった。
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