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からあげおじさんと森さん
森は高校の部活を適当にして、アルバイトをはじめた。
「モリ ちゃんとでなよ 部活」と友達は言った。
「わたし 社会体験部だからw」
森はコンビニで 、5-10時のアルバイトをはじめていた。
1人娘で母子家庭だが、母が昼夜介護で稼いて生活にはこまってはいない。
母と森も姉妹のように仲もよかった。
でも。
森は夜バイトしたのはで頑張ってる、母の気持ちを少しでも理解したかったからだ。
森の名は森ミレ、あだはモリだった。
「森さん悪いね! またシフト変わってもらって」
コンビニの店長は申し訳なく、頭をかいた。
「あ、大丈夫です 夜暇なんで」
森はコンビニで働いてから、一つ楽しみがあった。
からあげおじさんが毎日くるからだ。
からあげおじさんとは、毎日店側が揚げるからあげを10個頼むおじさんであった。
からあげおじさんは毎日のからあげと、週一で2リットルの1番安い焼酎しか買わない。
警備員のような服で、年は70-80才くらいであった。
いつものようにからあげおじさんは、入り口から脇目もふらずレジにくる。
「からあげ10個ね」とおじさんはにこにこ笑う。
「何個づつにされますか。塩と醤油とニンニクと、、」
森が説明する前に「全部で10個」と言う。
わかってはいるが、コンビニのマニュアルなのでそう言って2人はいつも笑う。
からあげおじさんは種類をえらばなかった。
森も店長から適当に、10個あるやつで大丈夫だよと言われていた。
でも一応説明だけしてねと、本部とオーナーの手前もあるからと、代々伝えられていた。
「レギュラー三個 にんにく三個 醤油和風四個
にしますね!」
からあげおじさんはウンウンいいながら、ニコニコと笑っていた。
「森さん学校の制服でうちの上着きてるけどズボンはきなよ スカートじゃいろいろ目線あるでしょ?うちオーナー店だから、別に服装は厳しくないんだけど。」
店長は棚卸ししてる、森を横目になんとなく話しかけた。
「だめですか?」
「いや、、森さんの自由だけど」
森がレジにいた時のことだ、三人組の酔っ払いが店に入ってきた。
「ねえ、あれ見せてよ」
酔っ払いが指差すのは カウンター内の、棚の上にある お中元用なお菓子だ。
森は脚立に乗って後ろ向きであれこれ探し、酔っ払いの言う商品を探す。
カシャカシャとスマホの写真が鳴り注文ばかりで、酔っ払いは一向に買う気配はない。
「黒かよ 以外だな」
と客はゲラゲラ笑う。
ピンピロリーンと店のドアが開いた。
からあげおじさんは少しその様子を少し見ていた。
おじさんは酔っ払いに客の間に割って入り、「からあげ10個」と大きな声で注文した。
ドリンクの品出しをしてた店長がレジにきて、酔っ払いは逃げるように店を去った。
森は不思議そうな顔で脚立の上から、からあげおじさんにいらっしゃいませとお辞儀をした。
からあげおじさんは、いつものようにニコリと笑った。
からあげおじさんが店に来なくなったのは
8月の終わりであった
「店長 最近こないですね 、からあげおじさん」
「うん、 ちょっとお客さんに聞いた話なんだけど
からあげおじさん 入院したみたいなんだ」
「事故かなにかですか?」
「いや体調みたい、毎晩からあげ食べてるくらいだし」
森は揚げ物をホットボックスに入れながら、店内から夜空を見上げた。
「森、クリスマスパーティーやるよ。クラスのやつらとやるからきなよ。男子もくるよ」
12月24日の夕方だった。重たい雲が上空に立ち込めて、森は上の空でその雲を見ていた。
「うーん バイトあるから」
「イブだよ?」
「ごめん それなんかトキメかない」
「わかった、気が変わったら連絡してね」
クラスメイトは相変わらずだなと苦笑いして、教室を出た。
コンビニのイブの夜はバイトも休みがちである。
森はケーキやらチキンやらを、相変わらず制服のスカートのままで陳列販売していた。
森がバイトからあがる10時前の時間であった。
からあげおじさんが久しぶりに作業着のままで入ってきた。とても寒い夜であった。
しかしからあげおじさんは森をみると、すぐにレジに行かず、商品を一つだけ取りレジにきた。
おじさんがレジにだした商品は、スパッツであった。
おじさんはそのスパッツとからあげ10個の代金を払うと、メリークリスマスと森にスパッツを渡した。
店長はお客さん こまりますと言った。
ても森は「なんか嬉しい ありがとう」と笑った。
店長も、うーんと頭に手をやるも見なかったていで
バックヤードにさがっていく。
からあげおじさんもニコニコ笑いながら。からあげだけを持って店を後にした。
森はおじさんの背中を見て、すぐにおじさんのプレゼントの袋を破いた。棚に走り商品を手にして急いでレジに通し外に出る。めくれたスカートを「森さん!」と店長は慌てておろす。
「おじさーん からあげおじさん」
おじさんが駐車場から振り返った。
森はおじさんに100円の生キャベツ千切りをわたし
「メリークリスマス」と笑った。
からあげおじさんは少しおどろいた様子で、またニコニコ笑い千切りキャベツのお辞儀して両手でうけとった。
からあげおじさんと森の頭に、白い白い雪が舞い降る。
「寒いから、早くお店に戻って」と優しく微笑んだおじさんに森はスカートを上げて「暖かいよ」とおじさんからもらったスパッツを見せた。
バイトの女子高生と
80近いからあげおじさん
そして からあげとキャベツとスパッツ
そんなイブの夜
からあげおじさんに手を振り、森は初雪の中コンビニに戻った。
12月末になった。
「森さん最近スパッツ履いてんだね」と店長が笑った。
「からあげサンタさんのプレゼント」と、スカートをめくる。
店長は少し残念そうに、少し安心したようにまた苦笑いした。
「おじさん最近顔色いいよね」
「あだ名も変わったしね」と森は揚げ物しながら言った。
ピンピロリー とドアが開いた。
「いらっしゃいませ」と店長が言うと、森は「いらっしゃいませ、からあげキャベツおじさん」と大きな声で言った。
おじさんはニコニコ笑って、千切りキャベツの袋をとった。
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