異界ふしぎ発見!

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「皆様、こんばんは。司会の草薙不比等(くさなぎふひと)です。今夜の異界ふしぎ発見はあの有名な異界駅〝きさらぎ駅〟を取り上げてみたいと思います」  タイトルが消えた後、なぜかレスリングのユニフォームも着たマッチョな司会者が、今回のテーマについて改めて説明をする。 「まこも君、きさらぎ駅の話は知っていますか?」 「名前ぐらいは聞いたことあるんですが、細かい筋となるとよく知らないですね」  そして、解答者席に並ぶ三人の内の一人、真ん中の神官らしき白い束帯姿の男性に尋ねると、彼は困ったような顔をしてそう答える。 「確かに。有名ではありますが、そういう方はけっこう多いのかもしれませんね。そんな方のためにも、今回は詳しく〝きさらぎ駅〟の内容について見ていきたいと思います……それでは異界ふしぎ発見!」  神官の言葉にそう返した司会者は、カメラの方へ右手を掲げて、お決まりの文句をその口にした。 「ここは、はすみさんが電車に乗ったという遠州鉄道の新浜松駅です」  司会者の合図で再び画面が切り替わると、大きく近代的な駅の階段を登りながら竹内がリポートを再開する。 「それでは、わたしもはすみさんに(なら)って、これから遠州鉄道に乗ってみたいと思いまーす」  改札を抜けながらそう断りを入れ、ホームへ下りた竹内は停車中の電車へと乗り込む。 「見たことも聞いたこともない駅へと到着したはすみさん。それでもその駅のホームに降りてしまいます。そんな彼女に2ちゃんねらー達は、車両に戻れ、いや戻らない方がいいと意見が二分します」 「この〝きさらぎ駅〟という都市伝説のそもそもの出所は、こうした体験者の書き込みとそれを見守るネット民達との間でリアルタイムに綴られた、掲示板の書き込み記録(ログ)なのである」  真っ暗な車窓を眺める竹内の映像に、彼女とナレーターの解説が流れる。 「到着しました〜! ここはネット民達の考察で〝きさらぎ駅〟なのではないか? と言われている遠州鉄道さぎの宮駅でーす!」  また画面が切り替わり、電車が止まって昇降口のドアが開くと、オープニングと同じうら淋しい夜の駅へ竹内が降りる。
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