4人が本棚に入れています
本棚に追加
「ベタなオチといえばやっぱりこれでしょう? もとの世界だと思いきや、なんとそこは霊界だったんですよ。じつはもうはすみさんは亡くなっていて、それを両親に聞かされてワオ! ワオ! ってなるんです。これで間違いないでしょう?」
「全員、オチとしてはありそうですが……さあ、正解はどうだったんでしょうか?」
自信満々にギャグも絡めて答える墓田だが、今回も司会者は完全スルーしてカメラ目線で合図を送る。
「えっと、今年は2011年4月……え? 2011年!?」
また画面が駅前に戻ると、竹内がガラケーのカレンダーを見ながら何か呟いている。
「電車に乗ったのは確か2004年の1月……え!? あれから7年も経ってる! そう。正解は〝7年経っていた〟でした」
竹内の正解発表に一瞬だけ画面はスタジオへと戻り、はずれた野々宮と墓田は残念そうに頭を抱えている。
「それで7年後に再び書き込みがあったんですね。つまり7年間、はすみさんはこちらの世界から消えていたことになるんですが、不思議と両親は何事もなかったかのように彼女を連れて帰ったんだそうです」
画面がまた戻ると、今度は再び夜の電車内で、独り座席に腰掛けた竹内がエピローグを語っている。
「この後、きさらぎ駅へ行ったという人物が他にも現れ、また別の異界にある駅の話も次第に語られ始めます。例えば、かたす駅ややみ駅、はいじま駅など、その数、なんと20以上……そんな〝異界駅〟のはじまりが、この〝きさらぎ駅〟だったんですね」
語りながら竹内は、コートのポケットからガラケーを取り出す。
「7年後、はすみさんが文末に書いた本当に最後の書き込みは次のようなものでした…… みんなありがとう…。おかげで戻れました ; ; 皆さんもお気をつけて^^」
彼女の手元がアップされ、そう打ち込む画面が映し出されると、映像は夜の線路の俯瞰へと切り替り、暗い田園風景の中を二両編成の電車が走ってゆく……そして、プァ〜…という、うらさびしい汽笛とともに、列車は「伊佐貫」と書かれたトンネルの中へと消えていった……。
直後、チャチャチャーン…!という軽快な効果音が鳴り響き、画面と視聴者の意識は明るいスタジオへと引き戻される。
最初のコメントを投稿しよう!