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「お疲れ様でーす」
「お、真島お疲れ!悪かったな」
俺は真島 映司。
事務用品の会社で働いている営業兼事務職だ。
「丁度帰り道だったんで問題ないです」
営業の帰りに上司から電話が来た。
『帰りに、五月を拾ってくれないか?』
というものだった。
少し遠回りの帰路になるが俺はためらわなかった。
五月 夕空。
俺は彼女のことが気になっていた。
いや最近はもはや好きだと言える。
でも、彼女には彼氏がいる。
同じ会社だけど倉庫管理をしてる五月さんの彼氏とは、
俺はほとんど会うことはない。
それでも顔くらいは知っている。
年上で、明るくて、友達も多い。
まぁ好印象な人だ。
「真島さんありがとうございました。」
遅れてオフィスに入ってきた五月さんが、
俺に頭を下げてきた。
「いえいえ、全然大丈夫です」
小柄でかわいい系なのに、
かっこいい女性にあこがれているらしく、
パンツスーツで高めのヒール姿。
本人には言えないけど、
ちょっとアンバランスで、
いつまでたっても新入社員みたいに見えてしまう。
『荷物が多かったから、タクシー拾えなくて…』
そう言った彼女の手には、
ほんとに大きな段ボールがあった。
それを台車に乗せて倉庫に戻してから、
オフィスに戻ってきたようだ。
倉庫にはひとりで行けると言った彼女の笑顔が、
何となく妬ましかった。
それでも俺が何か言えることは何もない。
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