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高梨悠斗は平和な日常を噛み締めながら新聞を読んでいた。すると、後輩の田端迅が血相を変えて走ってきた。
「高梨さん!大変です!高校で死体が発見されました!」
「なに!事故か?」
「いや、事故ではないみたいです」
「じゃあ、なんなんだ!」
「おそらく……自殺かと……」
「そうか……。とりあえず、現場に行くぞ」
「はい!」
二人はサイレンをガンガンに鳴らしながら現場へと向かった。
現場の高校に着くと遺体の置かれている場所に向かった。遺体は校舎の横にあった。
「ここか、遺体が発見されたという現場は?」高梨悠斗は聞いた。
「そうです」田端迅は答えた。
すでに現場では鑑識が来て調べていた。
「鑑識からの報告によれば、亡くなったのはこの高校の教師、佐伯莉子。状況から見てこの校舎の屋上から飛び降りたようです」
「そうか……」
「屋上には佐伯莉子の靴が揃えて置かれていて、遺書も発見されたようです」
「なるほど。それは自殺で間違いないかもな」
「そうですね」
「屋上に行ってみるか」
高梨悠斗と田端迅は屋上に向かった。屋上に着くと、フェンスのほうに行った。確かにそこには靴が揃えて置かれていた。
「確かにこれは誰が見ても自殺したと考えるな。フェンスもそれほど高くないな」
「そうですね」
「それで、遺書は?」
「これです」
遺書を受け取ると高梨悠斗はそれを読んだ。しかし、読んでも腑に落ちなかった。
「この先生は柔道部の廃部に抗議の意を示すために自殺したのか?」
「そう書いてますね」
「そんなことで自殺するか?」
「普通はしないと思いますけど……」
「この先生は柔道部の顧問かなんかをしてたのか?」
「いえ、やってないです」
「柔道部の廃部を取りやめるように校長先生に直談判してたとか職員会議で議題に出したとかは?」
「いえ、ほかの先生達に聞いても、佐伯先生が柔道部の廃部に対して反対してたとかは聞いたことがないみたいです。むしろ賛成してたくらいだそうです」
「じゃあなにか、表面的には柔道部の廃部に賛成してるように見せておいて、その裏では廃部を阻止するために自殺で抗議することを考えてたとでもいうのか!」
「そのようですね」
「そんなわけないだろ!怪しいぞ!本当に自殺なのか!この遺書だって自筆じゃなく印刷じゃないか!別の人が書いたんじゃあないのか!」
「そうですよね。やっぱりおかしいですよね」
「これは自殺じゃないぞ!」
「ということは殺されたってことですか?」
「そういうことになるな」
「事故の可能性とかはないですかね」
「ないだろ。事故なら遺書を偽装したり、屋上に靴を揃えて、自殺を思わせたりする必要もないからな。逆に、そういうことをしている人物がいてるってことは、その人物が佐伯先生を殺した犯人だってことだろ」
「確かにそうですね」
「鑑識に他殺の線でもう一度、遺体を調べてもらうように言ってきてくれ」
「わかりました」そう言って田端迅は下へと降りていった。
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