第一章 ホームレスと副社長

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 冬子は実はホームレスだった。  偶然通りかかった香也が冬子を見かけて、なぜか気になってしまい声をかけた。    冬子は怪我をした事で記憶をなくしてしまい、自分の名前も忘れていた。  ホームレスの広場に辿り着いたときに、真冬の寒い中にやってきた事からホームレス仲間が「冬子」と名付けたことから「冬子」と名乗っていると話してくれた。    香也は冬子を見ていると、周りのホームレスとは何か違うような気がしてハートがキュンとなったのを感じた。  香也は双子の妹・香恋を事故で亡くしてショックを受けていた。  半年前に婚約解消した内金恵理子が、お金を無心し続け会社のお金も横領して逃走していることも重なり何も考えられなくなり、いっそホームレスの仲間入りでもすれば楽になれるのか? と、考えてきた時だったのだ。  出会った冬子はどこか香恋と似ているような気がして、傍にいて欲しい! 離したくない! と強く思った。 「僕と一緒にいて欲しい」  そう香也がいうと冬子は一瞬きょんとなったが、すぐさま笑顔になり。 「いいですよ。でも代わりに、私に10億払って下さい」  と、言い出した。  何を言い出すのか?  そう思った香也だったが、何となくスッと入ってゆくのを感じた。 「いいよ、君に10億払うから。僕と一緒にいてね」  あっさりと答えた香也。  そんな香也に冬子はちょっと意外そうな顔を向けていた。  10億払うという事で、香也と冬子はそのまま一緒にいる事となった。  香也は自分の家に冬子を連れて行った。  宗田家は駅から15分ほど離れた住宅地の一角に建っている。  広々とした敷地に洋館のような建て具合で立っている宗田家は、一際目立つ豪華なお屋敷のよう。  日ごろはお手伝いさんが3人ほどいて、家の中の事は全てやってくれる。  専属の運転手もいて、送り迎えもしてくれる。  歩きながら香也は運転手に電話をして迎えに来てもらった。  宗田家に到着した冬子は大きなお屋敷を見ても、特別驚く様子はなく落ち着いた顔をしていた。     
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