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 今日は水曜日。週の真ん中で、ちょっと気怠い。空も真っ黒な雲に覆われて、ポツポツと雨が降り始めている。  いつもなら、気持ちもどんよりしちゃうけど……今日は大丈夫。  だって、新しい長靴があるもん!  私は、この前買ったピカピカの赤い長靴に足を通して、後ろにいるおばあちゃんに明るく声をかけた。 「おばあちゃん、見て見て!長靴履いたよ!」  赤い長靴を履いたままクルンとターンする私。それを見たおばあちゃんは、優しく目を細めてくれた。 「まぁ……ふふ。似合ってるよ」  おばあちゃんは嬉しそうに笑って、床に置きっぱなしだった手提げカバンを私に差し出す。 「春花、忘れ物」 「あっ、カバン!」 「長靴に気を取られて、うっかりしないようにね」 「うん。気をつける!」  私はカバンを受け取って、おばあちゃんに元気よく頷いた。  浮かれすぎて、忘れ物とか怪我とかしちゃったら大変だもんね。気をつけなきゃ! 「ふふっ、春花。行ってらっしゃい」 「おばあちゃん、行ってきます!」  私はおばあちゃんに手を振って、学校へ向かって歩き出した。
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