8.5 千秋と夏実

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8.5 千秋と夏実

 朝の会が終わってから、放課後になるまで、僕はずっとモヤモヤしてた。  理由はハッキリしてる。朝……春花ちゃんが眞冬とお喋りしてたからだ。  しかも、すっごく楽しそうに。 「はぁ……」  その光景を鮮明に思い出しては、1日中、溜息をついてしまっていた。  うう、だって……羨ましいよ。ヤキモチ、妬いちゃうよ。  春花ちゃんも、眞冬と一緒にいる時は、すっごく楽しそうだし……。  はぁぁぁ…………。  僕はランドセルに教科書を入れながら、また溜息をついてしまった。  その深いため息を聞いたからか、隣の席の夏実さんが心配そうに声をかけてくる。 「あの……志野くん、何かあった?」 「あっ、夏実さん……。ごめん、僕たくさん溜息ついてた……」 「ううん。大丈夫だよ。私は大丈夫だけど……志野くんが心配。私でよければ相談に乗るよ?」  夏実さんの優しい言葉。ありがたかったけど……眞冬に嫉妬してるなんて言ったら、夏実さん、困っちゃうよね?  夏実さん、眞冬と仲良いから……仲がいい人にヤキモチ妬いてるって言われたら、誰でも困っちゃうよな……うん、絶対そうだ。  僕は夏実さんに心配かけないように、頑張って目を細めて、白い歯を見せて、笑顔を作った。 「だ、大丈夫!大丈夫だよ!」
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