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「……よし」
私は後ろを振り返って、学校の方に引き返し始めた。
千秋くん、まだ学校にいるかな?もう帰っちゃったかな?
……分かんないけど、このまま帰るのは嫌だな。
千秋くんに会いたい。
会って、お話してから帰りたい。
歩くスピードが、自然と早くなる。心が、千秋くんのことでいっぱいになる。
傘が雨を弾く落とすら聞こえないぐらい、私は千秋くんのことを考えていた。
しばらく歩いて、学校の校門まで戻ってきた時。
「あ……」
見つけた。
見つけちゃった。
夏実さんと仲良く歩いてくる、千秋くんの姿を。
「……あっ、あれ?」
すごく会いたかったはずなのに、会えて嬉しいはずなのに……足が1歩も動いてくれない。
「私、どうしちゃったの……?」
私が動けないでいる間にも、千秋くん達はこっちに向かってくる。
「ど、どうしよ……」
すごく会いたくて、そのためにここまで戻ってきたのに、今度はその場から離れたくて仕方なくなっちゃった。
私、どうしちゃったんだろう。何で、何で?
私は……どうしたいの?
私がその場に立ち尽くしていると、千秋くんが私に気づいて手を振ってくれた。
「は、春花ちゃん……!」
その表情は、すっごく明るかった。
すっごく、すっごく……嬉しそうだった。
「あ……」
その表情を見た瞬間、足が1歩前に出た。
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