9

5/6
前へ
/145ページ
次へ
* * *  雨が降る通学路を、今度は1人じゃなくて千秋くんと一緒に歩く。  何から話そうかな?何を話したら、千秋くん楽しんでくれるかな?  私は重たいグレーの空を見上げながら、うーん、と考える。  話したいことは沢山あったし、夏実さんとのことも聞きたかったけど……どうせなら、千秋くんにも笑って欲しいなって思ったんだ。  私はしばらく考えて、やっぱり長靴のことから話そうかなって決めて口を開いた。  この長靴の赤は、千秋くんの赤だよって言いたかったから。 「千秋くん、見て見て!長靴、新しいのを買ってもらったんだ」 「あ……そんなんだ。綺麗な赤だね?」 「ふふっ、そうでしょ!あのね、なんで赤にしたか分かる?」  私がニコニコしながら尋ねると、千秋くんは顎に手を当てながら空を見上げて考え始めた。  ふふっ、当てられるかな?千秋くん、当てられるかな~? 「うーん……何だろう。好きな食べ物の色とか?春花ちゃん、苺、好きだったよね?」  千秋くんの答えを聞いて、私は思わずニヤリとしてしまう。  苺か~。苺も好きだけど、そうじゃないんだよなぁ。ふふっ……! 「残念!正解はねー、千秋くんの……」  私が正解を言おうとした、その瞬間。  バジャーーーーン!!  乗用車が、水飛沫を上げながら水溜まりを走ったせいで……。 「うわぁっ!?」  私と千秋くんの服が、ずぶ濡れになってしまったんだ。
/145ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加