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ずぶ濡れのまんま、私は千秋くんを連れて私の家に帰ってきた。
「ただいまー!」
玄関で大きな声で声を掛けながら、私は傘を畳んで傘置きに立てる。
千秋くんも少し戸惑っていたけど、私に習って傘を片付けていた。
リビングの方からのんびりしたペースで足音を立てながら、おばあちゃんが私達の所へやって来て、目を丸くした。
「まぁ、ずぶ濡れじゃないか!」
「帰り道で車に水をかけられちゃったんだ。おばあちゃん、お風呂って沸いてる?」
「流石にまだだと思うよ。今、メイドさんに頼んで準備してもらおうか。2人とも、とりあえず家に上がりなさい。タオルを持ってくるよ」
「ありがとう。千秋くん、行こ!」
私はまだ少し遠慮している千秋くんを促しつつ、赤い長靴を脱ぐ。
「あ……うん」
千秋くんも、自分の黒い長靴を脱いで部屋に上がった。
それとほぼ同時に、おばあちゃんが真っ白いタオルを2枚持ってきて、私達に持たせてくれた。
「頭を拭きなさい。風邪を引いちゃいけないからね。お風呂は後20分すれば入れるみたいだよ」
「そっか。千秋くん、それまでお話してよっか!」
「え、あ……そ、その前に!」
「その前に?」
千秋くんが何を言うのか分からず首を傾げていると、ふわり、と真っ白なタオルが、私の頭に掛けられた。
それに驚く間もなく、千秋くんの手が伸びてきて、私の頭をわしゃわしゃと拭き始める。
「頭、拭かなきゃ……ね?」
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