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ドアを開けると、まだ春花ちゃんは帰ってきていなくて、代わりにおばあさんが本を読んでた。
おばあさんは僕に気づくと、本を閉じてこちらへ微笑む。
「千秋くん。温まれたかい?」
「は、はい!」
「そうかい。なら良かったよ」
「ありがとうございます……」
僕は頭を下げて、その場に突っ立ったまま戸惑う。
春花ちゃんはいないし、おばあさんと一緒って、なんか緊張する……座ってもいいのかな?
僕が立ち尽くしていると、おばあさんはクスリと笑って手招きしてくれた。
「千秋くん、こっちへ座りなさいな」
「あ、はい……!」
僕は急いで、おばあさんの隣の席に腰を下ろした。
緊張して、何を話せばいいか分からない。飲み物も、さっきご馳走になっちゃったし、何もすることないし……。
ガチガチに固まっていた僕だったけれど、この後のおばあさん言葉で、緊張が全部吹き飛んでしまうんだ。
「千秋くんは、春花のことが大好きなんだね?」
「え!?な、な…………何で……!!」
「ははは!顔が真っ赤だよ?」
おばあさんに指摘され、僕は慌てて顔を下に向ける。
うう……は、恥ずかしい…………。
「ああ、揶揄ってごめんよ!嬉しくてつい、ね」
「嬉しくて……?」
僕は少し顔を上げておばあさんの顔をちらりと見上げる。
すると、目に映りこんだのは、彼女の温かい笑顔だった。
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