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「そう。大切な孫娘を、大切に思ってくれる人がいることが、嬉しいのさ」
「あ……大切に、だなんて…………」
僕はおばあさんから再び目を逸らし、痛くなってきた自分の胸を押さえる。
「僕、おばあさんみたいに……春花ちゃんのこと、思ってないんです。ただ、春花ちゃんが好きで、春花ちゃんの一番になりたくて。だから……大切にできてる自信、ないです」
僕は、か細い声でそう言った。
おばあさん、がっかりしたかな?僕のこと……悪く思うかな?
正直に言った一言一言と、おばあさんの気持ちが怖くて、僕は体を縮こめる。
でも、おばあさんの口から出たのは、穏やかな声だった。
「いいんだよ。それでも」
おばあさんは僕の頭を撫でながら優しく言葉を紡いでいく。
「一番になりたいってことは、それだけ春花のことが好きってことさ。春花は、みんなのことが平等に大切なんだろうけど、千秋くんはそうじゃないんだろう?」
おばあさんの目が、愛おしいものを見るように細くなる。
「平等の中から、春花を見つけて、春花を一番にしてくれた……それが、おばあちゃんはとっても嬉しいんだよ」
「あ……」
そうか、そうだったんだ。
僕が春花ちゃんの一番になりたいのは、僕の一番が、春花ちゃんだからだ。
僕が、春花ちゃんのことが大好きだからだ。
春花ちゃんが、特別な意味で大好きだからだ……。
自分の恋心に気がついて、僕は胸を押さえる右手に左手を重ねた。
苦しくて、ぎゅーって、ちぎれてしまいそうな痛みがあって……でも、温かくて、優しくて。
宝物みたいな気持ちだなって、思った。
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