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一番になりたいのは、悪いことでも苦しいことでもないんだ。
こんなに、こんなに……幸せなこと、なんだ。
僕は思わず、頬を緩ませた。
「……おばあさん」
「なんだい?」
「春花ちゃんに、教えてあげたいです。僕の……一番になりたいって気持ち。春花ちゃんが一番なんだって気持ち」
「そうかい」
おばあさんは、満面の笑みを浮かべながら、僕のことを撫でてくれた。
「全く、孫の成長ってのは、どうしてこうも幸せなのかねぇ……」
「え……?」
「ふふ。千秋くんが真っ直ぐ育ってくれて、嬉しいなってことだよ」
「あ……ありがとう、ございます」
「お礼を言うのはこっちだよ。千秋くん、頑張りなさいね」
おばあさんの優しい言葉。それに、僕はしっかりと頷いた。
その時、ドアが勢いよくあいて、頭に湯気をたち上らせた春花ちゃんが、僕に向かって元気に声を掛けてくる。
「千秋くん!外、晴れたよ!虹が見えるの!」
春花ちゃんはパタパタと僕に駆け寄ってきて、しっかりとこの手を握る。
「一緒に見に行こ!おばあちゃんも!」
まだ、僕は春花ちゃんの一番じゃないのかもしれないけど、それでも、僕の中では春花ちゃんが一番だから。
いつか、この気持ちを伝えられるように、これからも春花ちゃんの隣にいよう。
春花ちゃんが、僕の手を引いてくれる限り、ずっと。
「うん」
僕は春花ちゃんに連れられて、玄関から外へ出た。
雨上がり。雲間からのぞく、ハシゴみたいな光と、青空と、くっきり架かった虹色の橋。
今まで見た空の中で、一番色鮮やかで、綺麗だった。
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