10.5 千秋と雨上がり

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 一番になりたいのは、悪いことでも苦しいことでもないんだ。  こんなに、こんなに……幸せなこと、なんだ。  僕は思わず、頬を緩ませた。 「……おばあさん」 「なんだい?」 「春花ちゃんに、教えてあげたいです。僕の……一番になりたいって気持ち。春花ちゃんが一番なんだって気持ち」 「そうかい」  おばあさんは、満面の笑みを浮かべながら、僕のことを撫でてくれた。 「全く、孫の成長ってのは、どうしてこうも幸せなのかねぇ……」 「え……?」 「ふふ。千秋くんが真っ直ぐ育ってくれて、嬉しいなってことだよ」 「あ……ありがとう、ございます」 「お礼を言うのはこっちだよ。千秋くん、頑張りなさいね」  おばあさんの優しい言葉。それに、僕はしっかりと頷いた。  その時、ドアが勢いよくあいて、頭に湯気をたち上らせた春花ちゃんが、僕に向かって元気に声を掛けてくる。 「千秋くん!外、晴れたよ!虹が見えるの!」  春花ちゃんはパタパタと僕に駆け寄ってきて、しっかりとこの手を握る。 「一緒に見に行こ!おばあちゃんも!」  まだ、僕は春花ちゃんの一番じゃないのかもしれないけど、それでも、僕の中では春花ちゃんが一番だから。  いつか、この気持ちを伝えられるように、これからも春花ちゃんの隣にいよう。  春花ちゃんが、僕の手を引いてくれる限り、ずっと。 「うん」  僕は春花ちゃんに連れられて、玄関から外へ出た。  雨上がり。雲間からのぞく、ハシゴみたいな光と、青空と、くっきり架かった虹色の橋。  今まで見た空の中で、一番色鮮やかで、綺麗だった。
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