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そして、その眼差しは……少し悲しそうにも見えた。
「おばあちゃん、寂しいの?」
思わず聞くと、おばあちゃんはゆっくり首を横に振って、私の頭を撫でてくれた。
「春花達がいるから、寂しくないよ」
「ほんとに?」
「本当さ。春花といるとね、私はとっても幸せな気持ちになるの」
おばあちゃんの、目が細くなる。桃色の瞳が、優しく私を見つめていた。
「言ったでしょう?春花は私の『桜』なのよ」
「おばあちゃん……えへへ、そっか!」
私は明るく笑いながら、おばあちゃんを見つめ返す。
おじいちゃんは、遠くにいるみたいだけど……その代わりに、私がおばあちゃんの傍に居てあげるんだ。おばあちゃんを、幸せにさせてあげるんだ。
だって、私はおばあちゃんの『桜』だから。
「春花、今日の学校はどうだった?」
「学校?楽しかったよ!……あ、そうだ!」
私はおばあちゃんに身を乗り出して、
「あのね!8月4日にね、眞冬くんの家でバーベキューするの!千秋くんと夏実さんも一緒!」
と、今日いちばん嬉しかったことを伝えた。
おばあちゃんはニコニコしながら頷いて
「そうなのかい。じゃあ、それまでに宿題頑張らなきゃね?」
なんて、耳の痛い話をしてくる。
……でも、私がちゃんとやらなきゃいけないことだからね。頑張らないと!
「うっ……、うん!頑張る!」
私が力こぶを作って笑顔を見せるとおばあちゃんは嬉しそうに微笑んでくれた。
その笑顔が嬉しくて、大好きで……これからもずっと、おばあちゃんと一緒にいたいなって思ったんだ。
生きていれば、いつか死ぬ時は来る。
でも、まだ幼かった私は……まだ身近に亡くなった人がいなかった私は、その事をちゃんと分かってなかったんだ。
これからも、ずっと……おばあちゃんと居られるんだって、信じて疑わなかった。
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