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「え……?」
私がゆっくりと顔を上げると、目の前には顔を赤くした千秋くんがいた。
その赤い頬を見て、私の胸がギュッと締めつけられる。
「私が、特別……?」
胸が苦しい。何でか分からないけど、心臓がトクトクと音を立ててるのが分かった。
「特別って、どういう意味?」
私が尋ねると、千秋くんは赤い顔で俯く。
「……そのままの、意味…………」
千秋くんはそれだけ言うと、後ろを向いてしまった。
「……ごめん。忘れて!」
千秋くんはそう言って、バタバタと向こうへ走って行ってしまった。
「あっ、千秋くん……!」
私が千秋くんを追いかけようとすると、後ろから誰かに肩を掴まれて立ち止まった。
振り返ると、そこにはお父さんがいたんだ。
「そっとしてあげなさい」
お父さんはそう言うと、私に優しく微笑む。
「で、でも……!」
「春花。春花は、千秋くんがどうして春花に特別だって言ってくれたか分かるかな?」
「え……?」
お父さんに尋ねられ、私は俯く。
私が特別だってことは、千秋くんにとって、私は周りの人とは違うってこと。周りの人とは違って……1番だってこと……。
千秋くんは、私のことを大事に思ってくれてるんだ。他の誰よりも。
でも……それが何を表しているのか、千秋くんがどうしてそんなことを言ったのか……私には分からなかった。
いや、分かろうとすることができなかった。
千秋くんとの関係が、今までと変わってしまうような気がして、怖かったんだ。
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