12.5 夏実と眞冬

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 そんな私を見て、眞冬は苦笑いする。 「分かってねーの?」 「う、うん。……ごめん」 「謝んなくていーよ。なんつーか、真面目な夏実らしいな」  眞冬はそう笑うと、私に穏やかな笑顔を見せた。 「夏実、いつも俺のこと気にしてくれてただろ。小さい頃から……両親が離婚して、俺を施設に預けてからも、ずっと。……俺、夏実には助けられてばっかりだなーって、最近思ってさ」  眞冬の言葉に、私は目を丸くした。  私は、眞冬を助けるために一緒にいた訳じゃなかった。眞冬を独りにさせたくないのもあったけど、それよりも……私は、眞冬の傍にいたかったんだ。誰よりも。  だから、私には眞冬の言葉が少し後ろめたかった。 「助けてなんて……私、別にあんたのために一緒に居たんじゃないよ。私は……私のために、あんたの傍にいたんだ」  そう言って目を伏せる私に、眞冬は優しく告げる。 「それでも、俺は助かってたんだ。夏実がいたから、俺は曲がりなりにも学校に通えてた。夏実が、俺と一緒にいてくれたから……俺をよく思わない連中も、俺に直接攻撃してこなかった」  でも心が読めるから気づいてたけどな。と眞冬は苦笑いしながら、私の手を握る。 「眞冬?」 「俺、夏実の傍にいると安心するんだ。だから、ありがとな」  そう言って、眞冬はニッと笑いながら私と繋ぐ手をしっかりと握る。
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