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「あ、ごめん!えっとね、千秋くん、ウサギさんに優しいな、すごいなって思ってみてたの!」
「あ……そうかな」
「そうだよ!千秋くん、優しくてすごい!」
私は明るく笑いながら、素直な言葉で千秋くんを褒めた。でも、千秋くんは、あんまり嬉しそうじゃなくて、むしろ表情を曇らせちゃったんだ。
「すごく、ないよ」
「え?」
「すごくないんだ。優しくても、守れなきゃ意味ないから……」
千秋くんはそう言うと、身体を縮こめて、ぽつりぽつりと語りだした。
千秋くんが抱えている、暗い暗い闇のことを。
「こっちに引っ越してくる前にね、前の小学校で高次元生物が出たんだ。放課後、僕が飼育小屋のウサギを見てた時だった。僕、ビックリしちゃって。始めは逃げようとしたんだけど、ウサギを守らきゃって思って、アビリティを放ったんだ。そしたら、高次元生物は燃えて、動かなく、なって……でも」
千秋くんは、そこまで言って、口を噤む。体が小刻みに震えだして、瞳からは涙が零れ落ちていた。すごく苦しそうだったから、私は思わず傍に寄って、その背中をさすってあげたんだ。
そしたら、千秋くんは、声を潤ませながら打ち明けてくれた。
千秋くんが抱えている、鉛みたいに重たい心のおもりのことを。
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