12.5 夏実と眞冬

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「幼稚園の頃、私、運動会で転んで、膝を擦りむいちゃったでしょ?あの時、泣いてる私のことを眞冬が助けてくれた。眞冬が手を繋いでくれて……すごく、安心したんだ」  私は眞冬に笑いかけながら、1番伝えたかったことを、彼に伝える。 「だから、今度は私の番だよ。私が、眞冬の傍で……眞冬を、助けたいの。眞冬の笑顔、守りたいんだ」  私の言葉を聞き、眞冬は目を丸くして……やがて、照れ臭そうにそっぽを向いた。 「眞冬?」  私が尋ねると、眞冬は向こうを向いたまま、小さな声で呟いた。 「……ありがとな。ほんと」  そう言って、眞冬は私の手を離す。  それが少し寂しくて、私は目を伏せた。  ……でも、そんな私に対して、眞冬は明るい声で言ってくれたんだ。 「夏実が幼なじみでよかったよ」  恥ずかしがってるのか、少し無理して作ったような声。でも、それでも……私は、嬉しかった。 「うん。私も!」  私は明るい声で頷く。  遠くでやってた花火が終わり、庭の灯りがテーブルの上のランプだけになった。 「2人ともー!花火の片付けするぞ!こっちおいで!」  遠くから、輝樹さんが私達を呼ぶ。私はそれに返事をして、眞冬の腕を引いた。 「ほら、行くわよ」 「わ、分かってるよ。引っ張んなくても行くっての」  私は眞冬に思ってることを言えた喜びで笑顔になりながら、彼の腕を引っ張った。
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