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「春花も、私達に幸せを届けてくれる。春花が笑ってくれるとね、おばあちゃん、とっても嬉しいの」
おばあちゃんは、シワシワな顔を更にクシャッとさせて、とっても可愛く笑う。
「春花は、私の桜よ」
「おばあちゃんの、桜……。えへへ、そっか!」
おばあちゃんが笑ってくれたのが嬉しくて、私もつられて笑顔になる。それだけじゃない。笑うだけじゃ気持ちが収まらなくて、私はベンチからぴょんと下りて、おばあちゃんの前でくるりとターンをしてみせた。
「私、みんなの桜になる!」
私がくるりと回る度に、私の異能が発動して、薄紅色に輝く『桜の花』が舞い散る。私の生み出した『桜』と、大木の桜吹雪が、仲良く宙で踊った。
桜はみんなを幸せにしてくれる花。私も、そんな桜のように、大切な人を幸せにしてあげたい。これが、私にできた初めての夢。
人が簡単に死んでしまうこの世界で、桜のように、誰かを笑顔にさせてあげられたら……。その気持ちは、次第に私の心に芽生えて、根付き、大きくて美しい薄紅色の大木へと成長していった。
この話は、私の中の「桜」が、あなたの前で舞い散るまでの物語。
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