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もうすぐ小学2年生になる、ある春の日。あなたは、叔母さんに連れられて、突然やって来た。
北原邸の、天井が高くて広いリビングにある、白くてフカフカなソファ。そこに、桃子叔母さんと、ふわふわした黒髪の男の子が座ってた。叔母さんは、隣に座った私のお父さんと一緒に楽しそうにお喋りしてる。でも、男の子の方は……居場所がなさそうに膝を抱えて縮こまっていたんだ。
「あら、春花ちゃん!」
叔母さんが、リビングに入ってきた私に気づいて、顔をぱぁぁっと明るくする。濃い桃色の瞳が、キラって輝いた。
「大きくなったねぇ。最後に会ったの、いつだっけ?」
「えっとねー、5歳の時!」
「そっかぁ。うちの千秋と同い年だから、もう2年も前なんだね」
「千秋?」
千秋って、誰だろう?私が不思議そうに首を傾げていると、叔母さんは声を出して笑って、男の子の肩をポンポンと叩いた。
「そうだった、春花ちゃんは会うの初めてだったよね。この子、うちの息子の千秋。4月から、こっちの学校に通うことになったんだ。ほら、千秋。自己紹介しなさい」
「っ……え、えと…………」
男の子……千秋くんは、怯えた目で私を見て、直ぐに、膝に顔を埋めてしまった。
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