7人が本棚に入れています
本棚に追加
/141ページ
そういう眞冬くんの表情は、すごく悲しそうだった。藤色の瞳が、わずかに揺れている。
それを見て思ったんだ。眞冬くんにも、何か辛いことがあったんだって。
それは、みんなと仲良くできなくなるような、謝ることが無意味だって感じてしまうようなことだったんだ。
それに気づいて、胸が苦しくなった。私は、両手を胸のあたりでぎゅっと握りながら、眞冬くんを見つめる。
助けてあげたい。そんなことないんだよって、教えてあげたい。
「眞冬くん、お互いに謝れば……仲直り、できるんだよ」
気づいたら、私は彼にそう伝えていた。
「仲直りしたら、もっと仲良くなれることだってあるんだよ。だから……」
「だから、俺に謝れって?」
眞冬くんは、悲しみを帯びた眼差しを、私に向ける。
「謝っても、相手が許してくれるとは限らない。謝っても、捨てられることだってある。俺、知ってんだよ」
眞冬くんはそう言って……何かを諦めたように、笑った。
「北原には、分かんないだろうけど」
最初のコメントを投稿しよう!