3

9/28

7人が本棚に入れています
本棚に追加
/141ページ
「好きとか、嫌いとか、くだんねー。……どうせ全部、失くして終わりだ」 「え……、そ、そんなことないよ!手を離さなきゃ、失くさないよ!」  私は慌てて否定する。でも、眞冬くんの心には届かなかったんだ。 「北原には、分かんねえよ……!」  眞冬くんはそう吐き捨てると、乱暴に席を立って立ち去ってしまった。 「眞冬くん……」  私が何もできずに彼の背中を追っていると、後ろから夏実さんが声を掛けてくれたんだ。 「眞冬は私が呼び戻してくるから。北原さんは心配しないで」 「う、うん……ごめんね、夏実さん」  しゅんとしながら謝ると、夏実さんは申し訳なさそうに笑った。 「こっちこそ。……眞冬がごめん」  夏実さんはそう言い残して、眞冬くんの後を追った。  眞冬くんは、いったい何を抱えているんだろう。どうしたら、眞冬くんとも仲良くなれるんだろう……。  せっかく千秋くんが来てくれたのに、心に雲がかかっちゃった私は、始業式が終わって下校時間になるまで、ずっと眞冬くんのことで悩み続けてしまったんだ。
/141ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加